昨今はスマホ内蔵カメラの性能が飛躍的に向上していますね。
自分も仕事上の事柄を画像で記録するときに以前はデジタルカメラを用いていましたが、最近はもっぱらiPhoneのカメラを使っています。
デジカメは持ち運びも充電も手間ですし、よく置き忘れてしまうんですね。スマホなら肌身離さず持つことが体に染み付いていますからめったに置き忘れもありません。
ただ、最近のiPhoneの背面カメラの画素数は最新型を含めて1200万画素で固定されています。
またiPhoneに限らず、1200万画素というのはモバイル製品のカメラで一つの基準となっているようですね。Androidなどはもっと画素数が多いカメラを搭載した機種もあります。
さて、この1200万という画素数は果たして、撮影した画像を実際に用いる際に十分なものと言えるのでしょうか?
今回はそれを検証してると共に、画素数、解像度、ppiの概念も整理し直してみました。
画素数とは
まず画素数についてです。
これはご存知の方も多いと思いますが…
デジタル画像は小さな小さな四角形の集まりで構成されています。方眼紙をイメージすると良いでしょう。
その方眼が少ないほど画像はカクカクになり、色のグラデーションも粗くなります。
方眼が多ければ多いほどカクカクは目立たなくって画像は滑らかになり、色のグラデーションもより自然なものとなります。当然ですね。
その方眼がいくつで画像を構成しているのかを意味するものが画素数です。方眼1つ分に当たるものが1画素(ピクセル:pixel)になります。
デジタルテレビで画質の性能を表すときに、よく
“1,366 x 768”
とか表記されますが(一般的にハイビジョンと呼ばれるものです)、これは
・画面の縦辺が画素数768
・全部の画素数は 1366 x 768 =1049088
→約100万画素
同様に、
・フルHD(High definition : 高解像度):1,920 x 1080 = 約200万画素
・4K:3,840 x 2,160 = 約800万画素
・8K :7,680 x 4,320 = 約3,200万画素
ということになるわけですね。
さて、
画素数は多いほど滑らかな表現が可能になることは感覚的にも納得できると思いますが、画像の精細さは画素数だけでは決まらないのです。
さきほど画素について説明しましたが、1画素がどれくらいの大きさなのかということに関しては、実は取り決めがありません。
0.01mm四方の正方形を1画素にしても良いし、1m四方の正方形を1画素にしても良いのです。
ここでバカバカしいですが、極端な想像をしてみましょう。
たとえば先に説明したフルHD(1,920 x 1080)ですが、仮に1画素を1m四方の正方形にしたとすると、フルHDは横1920m、縦1080mにおよぶ巨大なスクリーンということになります。
仮に東京タワーに隣接させてこのスクリーンを作るとすると、高さは東京タワーの3倍以上となり、横の距離は六本木を越え東京ミッドタウンを越え、乃木坂駅まで達します。
地図上で見るとこんな超巨大なスクリーンということになりますね(笑)
さて、このスクリーンを数m離れた所から観てみるとします。
何が映し出されているのかはサッパリ分からないでしょう。
1m四方の四角が沢山敷き詰められていて、それぞれの色が目まぐるしく変化する…その程度にしか認識できないはずです。
数キロ離れた場所、たとえば恵比寿や目黒のタワーマンションの高層階あたりからであれば、かなり見上げるアングルにはなると思いますが映像は一応認識できるでしょうか。
アホらしい想像ですがつまり何を言いたいかというと、繰り返しますが画素数だけでは画像のキレイさは決まらない、ということです。
重要なのは画素の密度。ppiとは?
この超巨大スクリーンの例では何がダメだったのでしょうか?
画素数自体は十分に多かったのですが、1m四方の中に画素が1つしかなかったために、ちょっと離れたくらいでは画像がめちゃくちゃ粗すぎて話にならなかったわけです。
つまり一定の面積内にどれだけの画素数があるかが大事、ということです。
つまり画素数の密度ですね。
さて、その画素数の密度を表す概念が
ppi
という単位となります。聞いたことがあるでしょうか。
これが単純に画素数の密度を表していれば分かりやすいんですが、ちょっと違うんですね。
ppiはピクセル・パー・インチ(pixel per inch)、つまり1インチあたりのピクセル数を表します。
1平方インチではありません。
1インチの幅にいくつの画素が並ぶような密度なのか?ということです。
なんで普通に密度にしないんだよー!と思うかもしれませんが、すごくいろんな規格(サイズ)がある写真の印刷なんかには便利な考え方みたいです。
※解像度という用語について
この用語ですが、字面からなんとなく画面の精細さを表す単語であることは分かりますが、何を意味するものなのでしょうか?これに関しては、実は2通りの意味で用いられているのが現状なようです。
写真の印刷などで「解像度」と言う場合、上で説明したppiの意味で使われます。
一方で、パソコンやスマホで「解像度」と言った場合は、たんにそのディスプレイでの物理的な画素数がいくつあるかということを示します。たとえば「このモニタの解像度は1,920 x 1080です」と言ったように使われるわけですね。
なので解像度という単語が出てきたら、どのような意味で使われているかに注意が必要ということになります。
どれくらいのppiがあれば良いの?
さて、このppiですが、どれくらいあればキレイに見えるのでしょうか?
人間の眼は高性能ですが、限界はあります。
2点を見分ける能力を「分解能」と言いますが、人間の眼の分解能から考えると、
画像が300ppi程度を越えると違いを認識できない
ようです。つまり300ppiでも400ppiでも1000ppiでも、人間の眼には同じようにしか見えないということですね。
※参考:https://c.azmarche.com/articles/display/01.html
1200万画素を印刷として考えてみる
では、以上を踏まえて!(長かった…)
1200万画素というのはいったい、どう評価できるのでしょうか?
話を簡単にするために、画像を写真として印刷するケースを考えてみましょう。
写真と聞いて多くの人が想像するサイズは、L判という最も多いサイズ(89 x 127 mm)か、せいぜいハガキと同じ大きさでしょう。
でもここではA4サイズで印刷する場合を考えてみます。
一般の方がA4サイズで写真を印刷する必要がある場合は多くないはずですが、それすなわちそれ以上のサイズがファミリーユースで必要になる機会はまれということですので、普通に使う範囲での最大をA4と仮定することにそれほど無理はないかと思います。
さて、スマホやデジカメの写真サイズは様々ではありますが、ここでは単純化するために
1200万画素の画像がそのままA4サイズになる
と考えることにします。
この前提のもとで、A4のサイズからどれくらいのppiになるか計算してみます。
計算の過程を書いておきますが、よくわからんよ~という人は飛ばしてもらってけっこうです(笑)
A4サイズは 210 x 297mmですから、長辺(297mm)の方に並ぶ画素数をXとすると、短辺(210mm)の方に並ぶ画素数は
となります。
これが1,200万画素になるわけですから、
つまり297mmの幅に約4119画素が並ぶことになります。
1インチ = 2.54cm = 25.4 mm とすると、297mmは…
つまり約11.7インチということになるので、ここに4119画素が並ぶということは
つまり
約352ppi
になる、と言えます。
1200万画素はまったく使用に問題のない高画質である
デバイスごとの画像サイズ設定などの違いにより、厳密に計算すると値は前後すると思いますが、ここから大きく外れた値になることはないはずです。
さて、人間の目は300ppi以上の違いを見分けることは難しいと書きました。つまり乱暴な言い方をすれば
300ppi以上なら全てが高画質に見える
ということになるのですが
1200万画素の画像は、A4サイズで印刷しても352ppiになる
わけですので、実際に画像を印刷するような場合を考えても、1200万画素という性能は実用的に全く問題のない十分な高画質であると言えますね。
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